2024年度 第1回勉強会報告
梅毒 やれることをやっての流行か?

2024年度 第1回勉強会報告

梅毒 やれることをやっての流行か?

講師紹介

堀 成美(ほり なるみ)

感染症ラボ代表(看護師/感染対策コンサルタント)東京医科歯科大学大学院非常勤講師
神奈川大学法学部および東京女子医科大学看護短大卒業のち、病院の感染症科勤務を経て、2009年に国立感染症研究所実地疫学専門家コース(FETP)修了、2009~2012年聖路加国際大学、2013年から国立国際医療研究センターに勤務。2018年からフリーランスで感染症対策・地域や組織のグローバル対策のコンサルタントをしている。

講演概要

梅毒が問題だ、という声を聞くことがあります。何がどう問題なのでしょうか。問題だとして主語が大きすぎたり、嘆きの感情コメントを繰り返したりしても問題は解決に向かいません。感染症は病原体によって対策が違いますし、そもそも目指すゴールが違います。
「増えた」の背景が、検査アクセスが良くなって治療に繋がる人が増え、「全数報告」を知らなかった医師が報告をするようになり地域の疫学データに貢献できるようになったのは良いことです。
梅毒はコンドームでは防ぎきれないし予防ワクチンもないので、学校、診察室、それぞれの場で出来ることをマルチタスク的にこなすしかありません。しかし、問題だという人や報道でも扱われるのに、その先のアクションにつながっていないのではないでしょうか。
フェーズ・場面・職種ごとにやれることをやったうえで、嘆きでしょうか。見落とされていることや取り組めていないことについて、事例を紹介しながら、皆で確認してこの先にいきましょう。

勉強会報告

参加した皆様のご感想
  • 梅毒はコントロールすべき感染症であり、根絶は出来ないことから、対処方法としては、検査につなげることによって、診断と治療が可能である疾患であることを、全ての医療者が知ることであり、そのためにはそれぞれの人に届く情報提供を具体的に工夫する必要があることを再認識しました。性感染症全てに言えることは、症状がある人や症状がない人についても誤解や偏見によって、検査に結びつかないことを避けなければならないことも、この先の対策としては、まだまだすべきことが多いと思っています。
  • 何処に行ったら検査を受けられるか、を説明することを忘れないようにします。
  • どうやって相談援助をして検査に繋げるのか、基本的な相談窓口と費用のガイダンスをおさえることで学校など一般的な啓発はできると思った。
その上で、私は児相で安全とは言い難い性行動を続ける子どもに性教育をしているのだが、この子たちに刺さる情報提供と、一緒に検査行こうとか同行をし、怒らず希望も失わず、今より少し安全な行動をとれたら喜び、また元に戻った行動をしても惜しかったね、と言えるスタンスを貫きたいと強く後押しされた気がしている。
脅したり怖がらせても意味がないと個人はわかっていても、組織にそれを理解してもらう必要も感じた。
  • 私は住んでいる地域の中学校で行う性教育の中で、性感染症についてお話することがある開業助産師です。
    若い人の望まない妊娠や性感染症を防ぐため、未熟ながらもご依頼を引き受け行っています。中学生に分かりやすく、簡単に説明しようとすればするほど、まとまりがなくなり、「これでいいのだろうか?」と自問自答を繰り返しながら毎年苦戦しています。
    先日、『ねころんで読める性感染症』を拝読させて頂きました。今回の講座は、その著者である堀先生のお話であることに全く気づかず受講しましたが、「これまで聞いたことがない!」というお話ばかりで、大変わかりやすく、大変面白く、大変学びになりました。「梅毒はどうして増えているのかよくわからない」と、どこで学んでも言われていましたが、分析する機関がないということは知りませんでした。数字だけを追っていても、それをどう分析するのかについてが重要で、表だけでなく裏事情も知り得ていなければ、正しくアセスメントできないのだと納得しました。
    中学生に、「コンドーム使って!」と伝えつつも、「えーっと、梅毒とかパピローマウイルスとかは、コンドームしていてもだめで…」「コンドームは破れることもあるから…」
と中学生にとっては全く白黒判断が曖昧なお話になり、結果「コンドームは分厚いのすれば大丈夫ですか?」「コンドームは性感染症を防げないんですね」と感想にあるのを見ては焦り、個別にフォローしてきましたが、今回伺ったお話と、感染症の本を踏まえて、思い切って話の切り口を変えてみようと思いました。海外での取り組みや比較からも気づきがありました。今、中学生に伝えたいことの方向性を明確にしたいと思います。若い女性の感染を減らす、赤ちゃんを守る、検査へのハードルを下げる、そうした目標をもって伝えていこうと思います。

    地域の行政では、複雑な家庭環境にあり継続見守りとなっている不登校だった生徒や特別支援学校に通われた若い人への性教育を行い、性被害や加害を防ごうとしていますが、そうした性教育を行うための事業費が作れず、知識の薄い保健師が行って全く変化が見られなかったり、助産師はボランティアで依頼されたりしています。
    最後にお話しされていた、児相等で育った危険な性行動を起こす女子へのアプローチなども、同じようになかなか表には出ないお話でしたが、社会全体で見るととても大切なことであると感じていて、そうした問題に触れられた堀さんのお話が、とてもじんわりと温かく心に残り、とても勇気づけられました。

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