2021年度 第5回勉強会報告
子宮頸がんのない世界へ

2021年度 第5回勉強会報告

子宮頸がんのない世界へ

講師紹介

Sharon J. B. Hanley(当会理事)

University of St Andrews出身。北海道大学大学院医学研究科生殖分泌腫瘍学講座で学位取得。同大学の環境健康科学研究教育センターの特任講師。
女性医学、特に子宮頸がん予防を研究。専門はがんの疫学・公衆衛生学。

講演概要

この15年間、4価と2価HPVワクチンが世界およそ140か国で認可され、115か国では、公費助成制度があり、ワクチン事業(NIP)に組み込まれている。全世界で、この2種類のワクチンは約3億回接種され、安全性に対する科学的な疑念がない。また、2014年から第2世代HPVワクチン(9価ワクチン)がアメリカで認可され、現在日本を含めて、およそ70ヵ国で承認されて、これまでに 3500万回接種されている。興味深いことは日本と同様、英国では9価ワクチンが定期接種としてまだ導入されてない。最後に2019年末に中国製の2価HPVワクチンCecolinは中国で認可され、2021年10月にWHOの事前資格審査でも承認された。全世界の57%の国々がワクチン事業にHPVワクチンを取り入れているが、実際には全世界の女子のわずか15%だけが接種を受けている。アジアなら10%。この数字の低さは、ワクチン事業にHPVが含まれていない人口が多いインドや中国などの中低所得国が原因である。Cecolinよって、手頃な価格での新たなHPVワクチンの選択肢が各国に提供され、HPVワクチンの持続的な供給に貢献するだろう。中国人以外の集団に対する異なる投与法の免疫原性と安全に関するデータを収集するため、現在はバングラデシュとガーナでもCecolinの新たな第三相試験が行われている。

女子だけではなく男子接種が承認されている国はおよそ80か国で、43か国で公費助成もある。2014年からWHOの推奨で15歳未満の女児への接種回数が3回から2回に移行し、現在殆どの国が2回接種を行っている。さらに、2022年2月から英国のJCVI(joint Committee on immunisation and Vaccination) は14才以下の男女児なら、1回接種も推奨している。ただし、15歳以上の男女、HIV陽性や免疫不全の女児と男児(たとえば、臓器移者)には3回接種が推奨されている。ワクチンの有効性に関しては、2020年のスウェーデンからの4価ワクチン報告に続き、今月に英国からも12〜13歳で2価ワクチン接種した学年で87%も子宮頸がんの発症リスクを減らす効果が示された。使用するワクチンの種類ではなく、高い接種率がワクチン接種プログラムの成功に最も重要な要素である。日本でも、積極的勧奨再開後、高い接種率を達成するためには、厚生労働省がHPVワクチンを積極的に普及させ、その安全性と有効性を広く国民に伝えていく必要がある。

勉強会報告

参加した皆様のご感想
  • マレーシアのROSE PROJECTに感動しました。その地域でできることを、もっとよく考えていかねば、と思いました。
  • 日本がいかに諸外国から遅れをとっているかを実感しました。学びがとても多く、あっという間の時間でした。
  • HPVワクチン積極的勧奨再開に際し、有益な情報を得られとてもよかった。
  • 健康を守るためにワクチン接種を受けることは、権利だと思うので,子どもには受けさせたい。また、看護職として注射がうまいと言われている間に、役に立ちたい。自己採取により人、経済、心理、プライバシーの問題をクリアできるなら自己採取がすすんで欲しい。看護職としては、医療者による採取を希望する人のために、役に立ちたい。
  • 今後、日本で取り組むHPV感染症対策の具体的な方向性がわかってきました。取り戻すには遅くなったけど今から出来ることを誰もが気づいて行動しましょう。
  • 病院事務ですが、患者様に少しでも説明できるようにと思って参加しました。素人が専門家のお話を聞けて質問までできる機会を設けていただいたことに感謝しています。初めての参加で緊張しましたが、先生方が丁寧に指導してくださるので安心して最後まで講義を聞くことができました。
  • ワクチン接種を勧めることが子宮頸がん予防に大きな効果を産む事が良くわかりました。

当会では、女性の健康について学びを深める勉強会を開催しています。皆様のご参加をお待ちしています。