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3月18日開催:2022年度第5回勉強会「着床前/出生前検査、内密出産をめぐる法的・倫理的課題:妊娠葛藤を支える社会をめざして」(オンライン)

2022年度 第5回勉強会/オンライン

着床前/出生前検査、内密出産をめぐる法的・倫理的課題:妊娠葛藤を支える社会をめざして

このイベントは終了しました

日時2023年3月18日 (土) 18:00 – 20:00
オンライン配信配信URLは、参加申込が完了した時点でご連絡します。
参加費会員:500円
一般:1,000円
学生:500円(大学学部生まで)

当会では随時会員を募集しております。ご入会いただきますと、今後の勉強会は会員価格でご参加いただけます。入会ご希望の場合は、「入会のご案内」をご覧ください。なお入会手続きには1~2週間程頂戴しております。何卒ご容赦ください。

講演概要

演者は2020年秋の総会シンポジウムで「妊婦血液による出生前検査の20年とこれから:ガイドラインが守ったこと、制限したこと」のテーマで話をさせていただいた。当時は、厚労省のワーキンググループがNIPTの調査を終え、専門委員会の検討が始まろうとしていた時期である。その後、厚労省専門委員会は2021年5月に報告書をまとめ、日本医学会内に設置された認証制度運営委員会が2022年2月に指針を公表した。今年1月からサイトで一般向け情報が公開されている。

着床前検査については、日本産科婦人科学会が2022年1月と7月に指針(見解)の改訂をおこなった。それまで1つにまとまっていた指針が、「流産予防」と「重篤な遺伝性疾患」の目的別に3つに分けられている。

出生前検査や着床前検査は、かねてから優生学的運用や差別助長が危惧されてきた。日本産科婦人科学会や日本医学会の指針は、その点、十分配慮されているだろうか。されていないと演者は感じている。それは指針自体がもつ理由に加えて、いまの日本の法制度(堕胎罪と母体保護法のスキーム)が大きく影響していることを、当日、参加者と一緒に考えたい。

刑法堕胎罪は、「妊娠継続しない」という個人の意思を認めていない。母体保護法で違法性が阻却されても指定医師と配偶者が認めなければ中絶医療を受けられない現制度では、「中絶は妊娠した人の健康の問題であり、個人で決めてよいこと」というメッセージは伝わらない。そのため日本では、妊娠葛藤をささえる施策やヘルスケアがためらわれてきた可能性がある。

さらに「性道徳低下の防波堤」という堕胎罪の副次的保護法益は、女性が避妊することにも否定的なまなざしとして影響してきた可能性もある。緊急避妊や中絶で世界標準の運用をしてこなかった(したくてもできなかった)日本では、学業をはじめとするキャリアの中断、自死や孤立出産、生後0日児遺棄などが起きてきた。

2022年9月、法務省と厚労省は、先行する事実に押されるかたちで「内密出産の取扱い」を公表した。「妊婦が身元情報を医療機関の一部の人にのみに明らかにして出産したとき」の診療録や戸籍の作成方法などの実務的手順と法解釈が記されている。しかし、こどもの出自を知る権利など大きな課題も残っている。

名前を明かさず出産したいと思っている人に、子どものために名前を明かすよう、分娩前後に何度も“詰めよる”制度設計でなく、着床前・出生前検査も含めて妊娠葛藤をかかえる人のケアとカウンセリングを、妊娠前から妊娠中・中絶や出産後まで充実させ、その一環として内密出産にいたる女性をケアする必要があるのではないか。「産まない」「産めない」人に寄り添わない社会で、「産みたい」「産む」人だけを支援しても、選択肢という名の“圧力”を増やすだけになるように思う。

講師紹介

齋藤有紀子

専門:法哲学・生命倫理学
北里大学医学部附属医学教育研究開発センター医学原論研究部門准教授

1986年明治大学法学部法律学科卒業
1988年明治大学大学院法学研究科修了
2000年北里大学医学部医学原論研究部門専任講師
2007年〜現職

参加方法

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