2021年度 第3回勉強会報告
女性アスリートの健康サポート~歴史的背景と現状、そしてこれから~

2021年度 第3回勉強会報告

女性アスリートの健康サポート

~歴史的背景と現状、そしてこれから~

講師紹介

江夏亜希子

四季レディースクリニック院長、性と健康を考える女性専門家の会副会長。

1996年鳥取大学卒業後、同大学産科婦人科学教室に入局。同大学附属病院および関連病院勤務と並行して日本水泳連盟所属のスポーツドクターとして活動。2004年10月より東京大学大学院教育学研究科身体教育学講座でスポーツ・健康医学を学ぶとともに、ウイメンズウェルネス銀座クリニック等での女性外来での診療を経験し、2010年4月東京・日本橋人形町に四季レディースクリニック開院。

中村寛江

東京大学女性診療科・産科 女性アスリート外来を担当。

性と健康を考える女性専門家の会会員。神奈川県大和市林間クリニック、愛育病院非常勤勤務。
2008年筑波大学卒業後、同大学での初期臨床研修を経て2010年より東京大学産婦人科学教室に入局。
分娩、不妊症、婦人科腫瘍、思春期・更年期の診療など、女性のヘルスケアに従事。
2019年より東大病院で女性アスリート外来を担当し、様々な競技のアスリートの女性特有の健康問題に関する診療と研究に携わる。また、神奈川県大和市を中心に、中高生の性教育講演を担当している。

講演概要

この夏、コロナ禍の影響により1年遅れで東京2020オリンピック・パラリンピック(以後東京2020)が開催された。その理念の一つとして「多様性と調和」が掲げられ、ジェンダー平等推進もその重要なテーマの一つとされた。第1回近代五輪(1896年アテネ大会)は男子のみで開催され、女性の参加が認められたのは第2回1900年パリ大会から。以後徐々に女性の参加が「解禁」となる競技が増え、今大会は出場選手に占める女性選手の割合が48%と過去最高となった。

このような歴史の中で、女性アスリートが直面する健康問題は、大きく①過度なトレーニングによる健康問題(女性アスリートの三主徴(無月経、骨粗鬆症、利用可能エネルギー不足)等)②パフォーマンスに影響を与える月経関連疾患(月経困難症、過多月経による貧血等)の2つに分けられることがわかってきた。

機を同じくして、これまで「周産期」、「腫瘍」「生殖内分泌」を診療の三本柱に据えて発展してきた産婦人科では、女性の健康を生涯にわたって予防医学の観点も踏まえ、その三本柱を土台から支える「女性ヘルスケア」が注目されるようになり、日本産科婦人科学会も2014年「第4のサブスペシャリティ」と認定。東京2020の開催を追い風に、その一分野として、女性アスリートのヘルスケアが注目されるようになってきた。

今回の勉強会では、日本スポーツ協会公認スポーツドクター・日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医・女性ヘルスケア専門医などの資格を持つ産婦人科医2名より、「女性とスポーツの歴史と背景」(江夏)、「女性アスリートの健康サポートの現状とこれから」(中村)について講演し、東京2020の「レガシー」をいかに未来につなげていくか考えてみたい。

勉強会報告

参加した皆様のご感想
  • 地元の指導者講習会で参考にさせていただきたい内容でした。
  • 江夏さんの例え話が大変わかりやすく、講演のTPOを学びました。また、産婦人科医療を怖がらなくていいというのは、講師お二人の共通のメッセージだったように思います。このことは周りにも伝えて行きたいです。
  • 専門的なお話も多かったですが、大変有意義なご講演でした。学童期から競技者本人が正確な知識を持つ、相談できる相手がいる、知識や理解がある指導者がいる環境が必要だと再認識しました。
  • 女性アスリートも同じ女性として様々な問題を抱えていることを知り勉強になりました。
  • 女性としてスポーツに挑戦するためには、いろいろ調整することがあることがわかりました。専門家の支援は必須ですね。
  • 女性アスリートの育成に女性の指導者も活躍する時代が、来る将来も期待したいと思いました。若い世代から医学の進歩を享受出来るよう、学校教育も洗練されて欲しいです。江夏さんのお話は「アルアル」を多く感じた世代です。
  • アスリート外来にくる選手の涙、医療のサポートはもちろん、スポーツのルールの改善の必要さを感じました。それも医療とアスリート外来の存在が変えられるのではと希望が持てました。

当会では、女性の健康について学びを深める勉強会を開催しています。皆様のご参加をお待ちしています。