第36回:49歳、2人の子どもがいます。久しぶりのセックスで、引っかかりがなくイケないと言われてしまいました。
youさん(49歳女性)から、経産婦の腟の緩みと引き締め方についてのご相談です。
「49歳女性・子供が2人おります。久しぶりに性行為をした際、相手の方に引っかかりがなくイケないと言われてしまいました。締まりが悪くなっているのかとかなりショックでした。
確かに日常でも尿漏れや腟からの空気漏れがあり、緩んでいるのかと悩んでおりました。また、かなり濡れやすいのですがイキにくく、一度イケるとかなり締まると言われることがあり、そのことからイケる様に焦ってしまい、余計イケなくなってしまいます。
1年前から骨盤底筋体操と呼ばれる、内股やお尻を鍛える運動をほぼ毎日しているのですが、指で確かめても余り締まっている印象がありません。
このまま運動を続けて改善されるのか、他の手段もあるのか、ご助言頂ければ助かります。どうぞよろしくお願い致します。」
今回は、司会を当会理事で助産師の森下恵理子さんにお願いし、産婦人科医の堀口貞夫先生、雅子先生に加え、骨盤底筋にも詳しい当会理事の産婦人科医、福本由美子さんにも回答者として参加いただきました。
3年ほど女性泌尿器科でも仕事をされ、性科学会認定セックスセラピストとしての仕事もされている福本さんからは、以下のアドバイスがありました。
女性側の要因として
骨盤底筋がしっかりしているほうが、刺激として加わりやすいので、骨盤底筋体操に着目されていることはすごくいいことです。ただ自己流では効果が出にくい可能性があります。最近は理学療法士が指導してくださるクリニックもあるので、尿漏れの相談で受診して、具体的に指導を受けてはどうでしょうか。
男性側の要因として
最近は、マスターベーションの際に独特の方法で射精したり、グリップが強い方も見受けられます。テンガから発売されているマスターベーション用の器具に、5段階の強さを試せるものがあり、それで練習する方法もあります。
引っかかりなどについては、私の知識の範囲では不十分なので、「射精道」を書かれた泌尿器科医の今井伸先生にお目にかかるチャンスがあり、うかがってみました。
泌尿器科医で性科学会認定セックスセラピストの今井先生から
引っかかりがなくてイケないというのは、ペニスの冠状溝(ペニスの亀頭のすぐ下あたり)のところに刺激が加わらないので、射精できないのではないか?奥深く挿入して、深い挿入でばかりピストン運動してしまうために冠状溝が刺激されなくなっているのではないか?深いと、腟が最も締まる腟口に近いあたりの刺激がペニスに加わらないため、刺激が腟から与えられていないものと考えられる。浅8深2とか、浅7深3と言われるような浅い挿入になるようなタイミングを7〜8割に増やすとか、腟口にペニスのくびれの下(カリ首)と呼ばれる部分が来るような体位を工夫するとよい。または、ピストン運動のストロークを時々は大きくするといった方法などが、問題を解決する可能性もある。
イッタあとは締まりが良くなると言われているのであれば、マスターベーションなどでイッて
からペニスの挿入をしてもよいかもしれない。オーガズムのあとに挿入するのはどうか。
貞夫先生から
挿入の運動をしたとき、男女の恥骨が当たる。男性の場合は恥骨が当たる感じが大事なこともあるので、恥骨で感じる感覚、これも性感のひとつになりますが、それが意識の中にあるといいかもしれない。
最後に、3人からyouさんへ応援のメッセージをいただきました。
森下さん:久しぶりのセックスには勇気がいったと思いますが、それが少し悲しい結果になられたのだと推察します。性と生殖に関わる助産師として、セックスをもっと楽しんでほしくて、いろいろアドバイスしましたが、一方で性行為がすべてではありません。具体的な方法を試して、それでも解決できない場合は、性科学会が認定しているセックスセラピストなどに相談も考えてはいかがでしょうか。
貞夫先生:冠状溝への刺激の話もありますが、こだわりすぎないでください。思い込んでしまわずに、そういうこともあるんだ、くらいに思っていてほしいです。
福本さん:久しぶりにしては、お二人がコミュニケーションをよくされていて、伝えにくいことも具体的に話されていて、すばらしいと思いました。これからいろいろ試みてうまくいかないときも、話し合っていけるような関係性が垣間見えました。これからもよくしていきたいから、と話し合っていけたらよいと思います。
youさんがこれからもセックスを楽しんでいただけることを、願っております。
一般社団法人日本性科学会のウェブサイトに、学会認定のセックスカウンセラー、セックスセラピストの連絡先が掲載されています。ご参考になさってください。
https://sexology.jp/counselors_list/
「性と健康を考える女性専門家の会」には、医師や助産師、薬剤師などの医療者のほか、性の健康の実現を目指している様々な職種、当事者の方々が参加しています。
入会については「入会のご案内」に記載がありますので、性に関して知りたい、話をしたいと思われる方は、ぜひご検討ください。

