第33回:婦人科受診希望の中高生に「内診台で性器の診察されるよ」とおどす大人がいます。
みっちゃんさん(34歳・女性)から、以下のお悩みをいただきました。
中高生の頃、婦人科を受診したいと思っていたのに、親から「内診台で性器の診察をされるよ」と言われ、怖くなって受診をあきらめてしまったことがあります。今思えば、不用意にそういった話をすることで、受診を思いとどまらせようとしていたようにも感じます。
逆に、実際に受診が必要な場合でも、「内診がある」とあらかじめ伝えられると不安になる子もいると思います。親御さんの中には、「性交経験のない子には腹部エコー(お腹からの超音波検査)をすることがある」ということを知らない方も多いのでしょうか? 私自身、高校2年か3年の頃に婦人科を受診したとき、腹部エコーがあることをそのとき初めて知りました。
また、生理のことでも気になることがあります。
その頃、頻発月経に悩んでいて、一度、真っ黒な墨のような少量の経血が5日ほど続いたことがありました。「やっと終わった」と思っていたら、2週間後に今度は真っ赤な経血が大量に出てきました。まるで、子宮が「残っていた分をもう一度出そう」としているように感じました。こういった現象は「内月経」と呼ぶのでしょうか?
さらに、その後ベージュ色の点々がおりもののように下着につき、それが始まりとなって再び生理がきたのですが、その時もまた少量の経血(過少月経)でした。このようにベージュのおりもののようなものから始まる生理は、どのような月経に分類されるのでしょうか?
今回は、雅子先生、貞夫先生と、当会会員の森下さん(助産師)がみっちゃんさんのご相談にお答えしました。
産婦人科の診察は、受診される方の年齢や症状、そして性経験の有無などに応じて、診察内容や対応が異なります。その際、診察を受ける本人の気持ちと、医師が医学的に必要と判断する内容の間にギャップが生じることもあります。
例えば、思春期の女の子が多く来院するクリニックと、妊婦さんが多い産婦人科、更年期以降の女性が中心の医療機関とでは、医師のアプローチにも微妙な違いが出る場合があります。
かつて、経腟エコー(膣に細い器具を入れて子宮や卵巣の状態を確認する方法)がなかった時代、経腹エコー(お腹の上から超音波で診る方法)が基本でした。また、性交経験のない女性に対して内診はなるべく避けるという対応が一般的でしたが、現在では経腟エコーを含め、より正確な診断を重視する医師が増えています。性交経験の有無や年齢にかかわらず、必要な検査を選択することで早期の問題発見につなげたいという意識があるのです。特に親御さんの中には、「男性医師に身体を見せるのは不安」と感じる方も少なくありません。思春期の娘が内診台に上がるという状況に戸惑い、場合によっては受診を思いとどまらせてしまうこともあります。しかし、現在では女性医師の数も増えており、診察に対する心理的負担は以前に比べて軽減されつつあります。
みっちゃんさんが高校2〜3年生の頃に経験されたような、頻発月経や過少月経、予期しない出血についても、不安を感じる方は多いと思います。みっちゃんさんが「内月経」と表現されたような現象は、医学的にはホルモンバランスの乱れによって月経血がうまく排出されず、数日後に再度出血するケースと捉えられます。(内月経という医療用語は通常使用していません)また、月経前や月経の合間に見られるベージュの点状の出血は「不正出血」の可能性があり、注意深く経過を見ることが大切です。
こうした月経トラブルへの対処として、まずは基礎体温の記録を始めて、自分の月経周期や体調の変化を把握することが勧められます。これにより、医師に相談する際にもより具体的な情報を伝えることができ、診断の助けになります。
また、若い世代が安心して相談できる環境も必要です。たとえば、「ユースクリニック」のような、高校生や大学生が気軽にアクセスできる相談窓口が地域にあると、早期に不安を解消し、適切な医療に繋がる可能性が高まります。
これからも、皆さまの声を大切にしながら、「相談してよかった」と思える環境を整えていけるよう、取り組みを進めてまいります。
「性と健康を考える女性専門家の会」には、医師や助産師、薬剤師などの医療者のほか、性の健康の実現を目指している様々な職種、当事者の方々が参加しています。
入会については「入会のご案内」に記載がありますので、性に関して知りたい、話をしたいと思われる方は、ぜひご検討ください。